電車に乗ろうと、ホームを歩いていると、一瞬髪の毛を捕まれて線路側に引っ張られた。
 その瞬間、気を抜いたら本当にすーっと線路側に落ちそうな感覚だったが、頭を振り、姿勢を立て直した。

 私の髪の毛を掴んだのは、この世の手ではなかったが、触られた瞬間ヒヤッとした冷気が首を駆け抜けた。そういうモノに出会ったということは、自分の心に隙ができていた瞬間だったかもしれないし、ただのイタズラ心のあるモノの仕業だったかもしれないが、見る能力はないので、それは不明。

 やれやれと思いながら、もしあのまま電車が来ていて、私も体勢を整えられなかったらこの世から消えていたかもしれない。
 その瞬間、私はこの世に未練があるだろうか? と考えてしまった。いや、未練はない。やりたいことをやり、悔いの残らないように決断し時間を過ごし、前へと進んでいることを考えると、今この瞬間に関しては悔いは残らない。
 果たして未来への悔いはどうだろうか。やりたいこと、まだ見た事のないものへの好奇心はある。でも、それは常にあるものだから、悔いがあるとか、ないというものではなく、常に私に備わっている資質だから、いつ断たれようとも変わりはない。
 そう考えると、変な言い方ですが、いつ死んでもいいように、私は生きているように思う。ある意味、幸せである。
 こういう考えた方をすると、刹那的に捉える人もいそうだが、いたって自分的には前向き。何かを成し遂げることも大事だが、目の前にあることを解決することで、未来が作られる。
 自分の寿命が続くと思っていても、いつ死ぬかわからない人生だからこそ、いつ死んでもいいという、悔いの残らない生き方をこれからも私はしていきたいと、改めて思ってしまった。


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